「降りないの?」




不審がられても困るから、笑顔ですぐに降りた。




「靴箱のところで待ってる」




「待っててくれるの?」




「うん。送ってもらったし、あたしだけ先に行くのも悪いから」




「わかった。すぐに自転車を置いてくるね」




そう言って、草野くんは駐輪場へと急いだ。




先生に用事っていうのは、とっさに思いついたウソ。




背中を見送るとすぐに、靴箱へ。




カバンをさげて待っていると、友ちゃんが登校してきた。




「おっはよ~。真央、今日はいつもの時間なんだね。てっきり愛の早朝レッスンかと思ったよ~」




なんて言ってからかってくる。




「ちょっと、その言い方やめてよ。草野くんとはなんともない……」




「そーなの?昨日も、ふたりで放課後残ってたんでしょ?」




「そうなんだけど。作品を仕上げるために、仕方のないことなんだよ」




「またまた~。あっ、草野くんだよ。また迷惑そうな顔されたら嫌だから、先に行くね」




友ちゃんは苦笑いをして、先に歩いて行ってしまった。











もう……。



友ちゃんにそんな気を遣わせたくない。



だけど草野くんが友ちゃんを見て嫌な顔をするのが、あたしも目に浮かんだ。



「待っててくれたんだ、嬉しいな。なんかこうしてると、付き合ってるみたいだよね」




嬉しそうに隣で笑う草野くんに、あたしも笑いかける。




もちろん、少し演技入ってる。




今までのあたしなら、「ちょっとカバンの中見せてくれる?」って堂々と言うところだけど、




草野くんには色々お世話になってるし、




もし、あたしの思いすごしだった場合……




草野くんにかなり失礼だし、傷つけることになるもんね。