学校一のモテ男といきなり同居

頭上で不気味な光を放つ満月から目を背けるように、地面に視線を落とした。




「あたし……どうかしてた。草野くんを郁実と間違えるなんて……ごめんね」




体を離すように胸を押すと、




もう一度ギュッと抱きしめられた。




「井上の……代わりに、なれないかな」




「……え?」




「好きなんだ……三沢さんが井上を好きなことぐらい、理解してる。だけど俺もこの気持ちを止められないんだ」




「そんな……ダメだよ。あたしは……」




「身代わりでいい。井上に頼りたい気持ちを、俺にぶつけて。もっと頼っていいんだよ」

















不安なときに優しい言葉をかけられると、




少なからず揺れてしまう。




現に、ひとりでいるのはもう怖くて耐えられない。




満月の度に、




あたしはこうやって、ストーカーの面影に怯えて暮らさなきゃいけない。




こんなときに、側にいてくれる人がいたら……。




今、あたしに必要なのは、




こうやって側で支えてくれる人じゃないの?




恐怖心の方が勝り、郁実だけが好きだっていう気持ちが薄れていく。




草野くんの胸に抱かれたまま、




あたしはしばらく動けないでいた。