学校一のモテ男といきなり同居

「深呼吸して……そう、落ち着いて……」



優しい声がする。



……あれ、違う。



郁実……の声じゃ、ない。



ハッと顔を上げると、そこにいたのは……。














「やっぱり家まで送ればよかった……まさか、こんな状態になるなんて……」




心配そうにあたしを覗き込むのは、




郁実じゃなくて……草野くんだった。




ウソ……。




あたし、




郁実と草野くんを、間違えたの!?




目の前にいるのが郁実じゃなかったこともショックだけど、




間違えたことに、恐怖を覚えた。




そして、1年のブランクを痛感した。




郁実と過ごした楽しい記憶は今でも色あせないのに、




郁実を抱きしめたときの感覚、




匂い、声のトーン……




そういうものを、




全て忘れてしまっている。













満月に、狂わされたのは……



あたし、だ。