呆然となるあたしに、覆い被さる狼。



それは……紛れもなく、井上郁実!!



きゃーっ!!って叫んでドンと突き飛ばしたいけど、体勢が体勢だけにあたしの手は井上くんには届かない。



あたしの手は、バタバタと虚しく空を切るだけ。



こうなったら……。



あたしは井上くんの髪の毛を、思いっきり引っ張った。



「っ……」



やっと解放されたかと思うと、イスがそのまま後ろにひっくり返った。








もの凄い衝撃がくるかと思ったけど、意外とそうでもなくて。



あれっ……。



ハッとして周りを確認すると、あたしは井上くんの膝の上に乗っていた。