「ゴメンね…あたしも、知らないの」



「ですよねえ……あっ、そうだ。同じ学校に、井上先輩の彼女っていますよね?その人って、今どうしてるんですか?」



「えっ?あ……え、と……前はかなりショック受けてたけど、今はなんとか元気にやってるよ」



「あたしです」って、面と向かってはなんとなく言いづらい。



あたしは適当に濁した。



「すっごい美人だって、井上先輩が自分で言ってたんですよねー。モテて、新しい彼氏とか作ったりしてないですよね!?」



「びっ、美人!?えっ、誰が?」



「そうじゃないんですか?前に話したときに、言ってましたよ。俺にはもったいないぐらいの、最高で美人の彼女がいるって。

もー、めちゃくちゃ大切だから、絶対に誰にも渡したくないって、ホント溺愛してるんだなーって……ねえ?」



郁実がそんなことを!?



知らないところでそんな話をしていたなんて……。



恥ずかしくて、顔から火がでそうだよ。



女の子は、同意を求めるように他の女の子たちをチラリと見た。



すると、みんなが口々に話しだす。



「そうなんです。前にあたしたちが井上先輩に集団告白に行ったら、まとめて全員フられました!

彼女以外の女には、全く興味ナイって」




「どんな彼女なんだろうって、みんなで話してたんです。きっと、完璧なんですよね…」



「そんなに愛されて、羨ましい~!!」



「アハハハハ…」



とりあえず、苦笑いしっぱなしのあたし。



話しを聞く度に、



自分が彼女だって、



名乗れなくなっていく。