学校一のモテ男といきなり同居

いつもの郁実なら、飛んであたしを支えてくれそうだけど、今は全く落ち着く様子がなかった。


「郁実っ…落ち着いて?きっと、いい方法があるはず…」


「ねーよ。学校側からやめろって言われて、しかももう退学届もでてるしな。

こーなったら、さっさと契約をすませるしかないな」
     

「それが…おじさんは、郁実が芸能活動をするなら、家族の縁を切るって…」


「親父が、そんなことを?ま、無理もねーな。前からそのことでケンカしてるし。

なにがなんでも、一緒にあっちに連れて行く気なんだな…」


「郁実……デビューするのは…今じゃなきゃ、ダメ…なの?」


「…え」


信じられないとでもいった風に、


郁実の瞳があたしに向けられる。


「一度、おじさんのところに行って、説得して帰ってくるのは…どうかな。

それからでも遅くな……」


「真央も、そんなこと言うんだな…」


郁実の視線が、冷たい。


ズキズキと、胸が苦しくなる。


「それが…一番いい方法じゃない?おじさんに縁切られたら大変…」


「見損なった…お前って、そんなヤツだったんだな」


ズキッ…。


「そうじゃないよ。郁実は、きっとおじさんを説得できると思うからこそ…」



「さっき、言ったよな」



「…え?」



「あっちに行ったら、多分…流される。慣れない環境に無理やり適応して、バンドなんてどうでもよくなる。

真央のことだって…きっと、すぐに忘れる」


あたしが一番恐れていたこと。


郁実は、どこでもうまくやっていける人。


順応性が高い分、そこでうまくやるのに一番いい方法を自然と選ぶ。