「急がなくていーよ。俺が乗せてくから」



リビングを出たあたしの肩を、郁実が軽く引っぱる。



「いいってば」



「俺がヤなの。危なっかしくて、もう電車にひとりで乗せらんない」




「子供じゃないもん…」




「俺らは、まだ子供なんだろ?親父には、明日直接会って話すつもり。お前も、俺に甘えろよ」




グイッと肩を引き寄せられ、頭が郁実の胸にコツンとぶつかる。












「痛い、もっと優しくしてよ」



「うん」



って言いながら、あたしの髪を撫でて顔を寄せてくる。




「ちょ……なにするっ……」



避ける間もなく、強引にキス。



そしてあたしは、なにも言えなくなってしまう。



「……かわいい」



チュッと音をたて、今度はおでこに軽くキスされる。



……ボボボッと、顔が熱くなる。



郁実の笑顔がまぶしくて、キスされたことが恥ずかしくて、あたしは急いで郁実の腕からすり抜けた。