ケータイを握りしめたまま俯いていると、横から郁実にケータイを奪われた。




「……ああっ!!」



取りかえそうとするけど、思いっきりニラみつけられてしまった。



ケータイを耳にあてた瞬間、郁実は眉を寄せて固まっている。



それもそのはず。



郁実は電話の相手がミキオくんだと思っていたはずだから。



電話の相手が女の子で、しかもそれが白雪さんだなんて……。










郁実は黙ったまま、何度か髪をかきあげる。



その仕草がカッコいいなんて、つい思ってしまう。



……あたし、なに考えてるんだろう。



郁美とは、ついさっきまで険悪な雰囲気だったのにね。



あたしの位置からは、ケータイからなにも聞こえてこないから、白雪さんがどんなことを話しているのか、さっぱりわからない。



だけど郁実は表情を変えることなく、黙ったままケータイを耳にあてていた。