「ただいまー」


「おかえり。お客様が来てるから、静かにしててね」


家に帰るなり、お母さんが玄関に飛んできた。


「はーい」


あたしはすぐに、自分の部屋に閉じこもった。


…そして、今日一日のことを思いかえす。








2時間目をサボって、


郁実と過ごした甘い時間。


あのあとは結局、


郁実の方から、『お前、いい加減に離れろよなー』


って、照れくさそうに言われた。


最初は、またいつもみたく言いかえしそうになったんだけど、


郁実の照れ顔を見たら、もう何も言えなくなってしまった。


あのチャラ男も、


照れるときは、照れるんだね…。


思っていたより、普通で安心した。


だって前に、『キスなんてどうってことない』


みたいな発言をしてたぐらいだし。


あれって、強がってただけ?


それとも、意識し始めたら…


郁実もあたしと同じように、ドキドキするってことなのかな……。