学校一のモテ男といきなり同居

「俺だって……不安だから」



「……え」



「口ではデカいこと言ってても、このチャンスを失ったら、もう後がないかもって思うときもある。

親父の海外勤務も、当初の予定より延びそうだし……俺だって、いつまでも日本にいられるわけないって、ホントはいつも焦ってる」



ズキッと胸が痛んだ。



井上くんがデビューをしたい理由は、世界一のアーティストになることだけど、



それ以前に、家族が海外に住んでるんだもんね。



このままだと、コッチにいることすら、難しくなるの……?









「あっちに……行っちゃうってこと?」



「この間、親父から連絡があって……思ったより、海外生活が長くなりそうだから、そろそろ準備しろって言われてさ」



井上くんが、あたしの手を更に強く握りしめる。



「俺……行きたくねーよ……。今、日本を出たら、今まで積み重ねたモン全部、捨てることになる。

また、1からだ。それも、自分の意思じゃなく、毎回親の都合でだぜ?バカみてぇ……」



悔しそうに、そう吐きすてる井上くんの声が、



なんだか、とても弱弱しくて。



いつだって存在感バッチリで、



何度もあたしを助けてくれて、頼もしかった井上くんのことが、



すごく小さい存在に思えた。