「襲われたとき…ねぇ。そんな練習いんのか?」


「…ですよねぇ」


「それに、お前…今、マジだったろ」


「えっ、そっ、そんなわけないっす」


ミキオくんは、完全にビビっている。


井上くんが怒るところなんて、あんまり想像できないんだけど、


あたしがキスされたときは、かなりひどく殴られてたし、


きっと、怒ると怖い人、ってやつなのかもしれない。






「真央、こっち来い」


え…。


井上くんが、あたしを見ている。


あたしはゆっくりと立ちあがり、ミキオくんから離れた。


ホッ…。


安心したのも束の間。


――ドカッ!!


井上くんが、ミキオくんのお腹を思いっきり蹴りあげた。


えぇっ!!


あまりの不意打ちに、避けることすらできなかったミキオくんの体が、壁に打ちつけられる。


あまりに一瞬の出来事で、


あたしは、ただ見ていることしかできなかった。