「ごめん…」


「…んだよ、珍しく素直だな。いいって。ホントのことだし?」


さっき井上くんの表情が曇った気がしたけど、もう笑ってる。


…さすが!


いい人歴が長いだけに、切り替えが早いね。







「ムカついたなら、言えばいーじゃない」


「ムカついてねーよ」


「ウソ…」


「マジで。女見たら、口説けぐらいの勢いだし?俺って全然信用ねぇもん」


「自分でわかってるんだ…」


ふてくされることもなく、井上くんはまだ笑っている。


「そこで、笑うからだよ」


「もう…染み付いてる」


「一緒に住んでるんだし…あたしにぐらい、いいヤツ卒業したら?」


「…は?」


怪訝な顔であたしを見る。


あ…あたしも、何を言ってるんだろう。


別にコイツがどんなだって、もういいじゃない。


「別にっ!とにかく、歌えるぐらいならもう復活したってことだよね。

さっさと寝て、週末のオーディションに備えたら?」