私は今理事長室にいる。

というか、普通にドアをノックして入っただけなのだが…

なぜか視界が真っ暗で、抱きしめられてる感じなのだ。

『……(誰だろう?)』

「真…。」

消え入りそうな彼の声が聞こえた。

『お兄ちゃん…?』

「ああ…。ってお前、今までどこにいたんだよ!!」

そう言って怒りながら私を離し、涙目で私を見つめるのは、まぎれもなく私の兄――椎名棗(Sina Natsume)だ。

苗字が違うのは、彼は、私達の両親が離婚するとき、母に引き取られたからだ。

「真…?」

『あー…まぁいろいろと…。そこら辺ぶらぶらしてたよ。』

本当は聞かないでもらいたい。


―思い出すと今の自分を保っていられなくなりそぅだから――