私はあまりの怖さに声が出なかった。 背中に冷たい汗がツウと流れる。 その人の顔は月明かりに照らされて、 一層彫りが深く見え キリリとした形のいい眉の下の眼鏡の奥で 彼の目は 金色と群青色の光を放っていた。 「どうして、お前がここにいる。」 「東條...先生...」 掠れそうな声を絞り出して 目の前の人の名前を呼ぶ。 先生は驚いて目を見開きながら私を見下ろす。 私はへたりとその場に座り込んでしまった。