いじましく食パンをかじっていた可奈子の顔が彷彿とした。

「後輩にお持ち帰りしてもいいかしら。彼女、過去に色々あって、すごく貧乏してるの」

するとヒロトはひどく感動したような顔になって
「なんて優しい人なんだ……」
と呟くように言った。

「美穂さん。あなたは僕のマザーテレサだ」

そのマザーという単語に吐き気を覚えた。

ペニンシュラホテルの立派な袋に詰められた食べ残しを抱え、あたしは逃げるようにステイ先へ戻った。