ペニンシュラスイート。

予約してあった最高級の部屋の室内は、驚くほど広くて洗練されている。

一面ガラス張りのリビングからは香港の夜景が一望できた。

テーブルにはフルーツとシャンパン。

「今夜は特別な夜だから、最高のシチュエーションを演出したかったんだ」

はにかむようにヒロトが笑う。

こんな男が三十まで独身だったなんて、マジで奇跡の優良物件。

この際、藤山が姑になることは、いたしかたないか……。

かなり気持ちが傾いていた。

「受け取ってくれるね?」

差し出されたのはヴァンクリフのエンゲージリング。

1カラット以上ありそうな極上ダイヤ。

あたしはもう陥落寸前だった。