機内食をがっついていた様子といい、どうも重役の娘らしくない食生活。

「ねぇ、沢井さん。あなたのウチ、お金持ちよね?」

可奈子は照れくさそうにエヘヘと笑った。

「そうですねぇ。貧乏じゃないと思います。お父さんはこの会社の上の方で頑張ってるし、お母さんの実家はお医者さんだし」

「じゃあ、なんで朝ごはんが食パンだけなの? しかも、バターとかジャムとかついてないし」

「あたし、お金持たせてもらえないんですよぉ」

ホテルに備え付けのインスタントコーヒーをすすりながら、可奈子が笑った。

「なんで?」

「高校生の時にムチャな使い方して、両親、マジ怒りで。それ以来お小遣いは月一万円なんですぅ」

―――マジかよ?

社会人にもなって、月一万はキツイよな……。

家族とローンを抱えてるリーマンだって、月三万ぐらいは小遣い貰ってるって言うじゃん。