ついて行く事を拒んでいた結だったが。

男の携帯が鳴りだした。

男は躊躇う事無く、それに出る。


「もしもし、ぁ、琴美さん?」

琴美と聞いて、結の顔がパッと明るくなる。



「ママと代わって」

結の言葉に男は頷いた。


「・・・ママ?」


『ザ…結、おいで』


「うん、わかった」

確かに琴美の声だった。

生まれて5年間聞き続けてきた母の声。

聞き間違えるわけがない。


…例えそれが、録音された声でも。


携帯を男に渡した結は、

満面の笑みを見せた。


「ママがおいでって」

「・・・そうか」


「お兄ちゃん、連れて行ってくれる?」

「もちろんだよ」