「なお……ちゃん」
ヤバイ!ヤバイ!!思いっきりヤバ━━━━━━イ!!
さゆりに抱きつかれた腕を取って、なおに近づく俺。
「なお……今のは……」
言い掛けた俺の前を横切って、さゆりのほうへ真っ直ぐ向かうなお。
「彼女がいる男に手出してんじゃねーよ! 見苦しい女!!」
……へ?
なおがさゆりに説教してる。さゆりも俺も唖然としていると、今度はこちらに近づいてくるなお。
「歯、くいしばりな」
「はい?」
理解できないまま、なおの手が俺の頬を平手打ち。
いつもどつかれてるのに、今の平手打ちのほうが何倍も痛くて……
「抱き付かれてあんな顔するなんて……未練たらたら? 信じてた私がバカだった」
「違うって!!」
確かに昔を思い出してしまってたけど、未練なんかない!
「こんな男いらない。あんたにあげる。別れてから手、出しなよ?」
「なお! 勝手に決めんな!!」
握り締めた腕は、ものすごい勢いで振り払われた。
そのまま走り去って行くなお。すぐに追いかけようとする俺を引き止めるさゆりの手が伸びてくる。


