無言で歩いていると、なおが口を開いた。
「……悪いけどさ、やっぱり私はあんたとは友達にはなれないよ」
コツコツと歩くヒールの音。すれ違うスーツを着た大人たちの声。
たくさんの音にまざって聞こえてきたなおの言葉。
「……なんで? 元カレだから? 気まずい?」
なおは俯いて黙り込む。
お前の性格を考えたら、そんな言葉を言ってくるのは想定内のことなんだよ。
だから最初、友達として付き合っていくことを承諾してくれた時は、ほとんど賭けに近かったんだ。
「……ツッチーに彼女ができた時に、元カノの私と友達だったら彼女がかわいそうじゃん」
彼女なんてつくらねーよ。もう……目の前にいるお前しか俺は見えてないんだから。
「わかった! 友達もやめよう!」
最後の俺の総仕上げ。
最後の賭けだよ。
「その代わり今度の休みにツーリング行こう。約束したまま行けずじまいだったし……それを最後に。友達付き合いもやめよう?」


