「じゃあね!」
さゆり達が俺たちを通り過ぎて行こうとした瞬間……
「待ちなよ!」
なおがさゆりを呼び止めた。
「その女の彼氏! あんた気を付けたほうがいいよ? この女、三年間付き合っていた彼氏を友達呼ばわりして、しかも二股してたんだから!」
な……なおちゃん!?
「え?」
さゆりの彼氏の顔が凍り付く。
「ちょっと! でたらめ言わないでよ!」
「でたらめ言ってるのはあんただよ! 私に何人も男がいるって? 今度、そんなことを誰かに吹き込んだら絶対許さないからね!?」
なおのマジギレにさゆりは泣き出して、彼氏に抱き付いた。俺となおから見たら完璧演技にしか見えないんだけど。
俺はなおの肩を抱いて歩きだした。
そしてさゆりの横を通り過ぎる時に言ってやった。
「得意料理は肉じゃがって今どき言わないよな?」
「ぷっ!!」
なおと俺は大爆笑しながら帰った。
きっとあの新しい彼氏にも肉じゃがが得意料理だと言っていたはず。
そう考えたらおかしくておかしくてたまらなかった。


