タクシーから降りて手を繋いでアパートまで帰る途中……
どこかで聞き覚えのある声。
「私、こう見えても料理得意なんだよ♪」
目の前から歩いてくる腕を組んでいるカップル。
なおと俺は思わず足が止まる。
そう、まさしく今話していたあの女。
元カノさゆり!!
新しい彼氏ができたのか、腕を組んでキャピキャピしていた。
俺たちの視線に気付いたのか、さゆりも俺たちを見て足を止める。
「直哉じゃん! 久しぶり!」
この女は何もなかったかのように笑顔で話し掛けてくる。マジでウザイ!
「さゆりちゃん、誰?」
連れの男がさゆりに聞いてくる。そしてさゆりが口にした言葉は……
「高校の友達! 同じクラスだったの」
と も だ ち
三年間も付き合っていて友達?
未練なんてなかったけど、楽しかった思い出も大好きだったあの頃の感情も……
一気に消えていくのを感じた……。


