第2章







『どうしてわたしはカノンなの?』




幼い少女がひとりの女性に話しかけている。




『カノンってね、夏の音って書いて、夏音なの』

『なつのおと?どのおと?せみ?ふうりん?はなび?』

『全部確かに夏の音ね。でもね、違うの』

『じゃあ、なつのおとって?』

『その音はね、夏じゃなくても聞くことはできるのよ。でもね、夏に聞くのがいちばん、綺麗だなって思う音』

『えー!わかんないよー!おしえてよー!』

『ふふふ。自分で見つけてみてね。近くにあるから。引っ越しちゃったら遠くなっちゃうかもしれないけど』

『え?ちかく?うーん、なんだろう……』




少女は考え込みながら、歩いて行った。



『いつもそばにあると、それが当たり前になってしまって、それの大切さがわからなくなってしまうものよ』




女性はそう呟いた。