第4章





『おかあさん!なつのおと、みつけたよ!』

『ほんと?どれどれ?』

『こっちだよ!おかあさん!はやく!』




少女は女性の腕をその小さな手で引っ張る。




『はいはい、今いくから』




女性は握っていた菜園用のスコップを地面に置き、少女にされるがままについていった。

少女は庭の小さな木製の扉を開け、浜辺へと出た。

少女の家の庭と浜辺は直結しているのだ。



強い日差しの中、場に似合わず白い肌をした少女は口に指をあて、女性にしーっと言った。



『しずかにしてね』

『ええ』



二人は静かに聞き耳をたてた。



『ほら、きこえるでしょ?』


―――ザザーッ……ザザーッ―――


『そうね、聞こえるわね。これはなんの音なの?』

『なみのおと!』

『そう、正解!よくわかったわね、夏音。もしかして、ずっと探していたの?』

『うん!だってしりたかったんだもん』

『いつでも聞けるけど、夏がいちばんきれいで、身近にある音。それは波の音』

『わたしなみのおとだいすき!』

『わたしもだ~いすき!夏音ももちろん大好き!』

『わたしもおかあさんだいすき!』




ある夏の日の昼下がり、女性と少女の微笑ましい風景。


だが、はたして少女は今でも覚えているのだろうか……