『カノン、よく聞くのよ』




ふと、そんな声が聞こえて来た。誰だろう。聞いたことのある声だけど、思い出せない。



『もう、忘れちゃったの?お母さんよ』



お、お母さん?!ってあの、お母さん?



『本当のあなたのお母さんの妹よ。でもわたしの方が年上になってしまったけれど。
カノン……もう、もち堪(こた)えることが難しくなって来たわ』



もち堪える?何から?



『あなたの本当のお母さんよ。わたしもこの世界に戻って来たの。そして、今は島の中にいてお姉様と対峙しているわ。あの突風はお姉様が放ったものだけれど、その後はわたしが食い止めているの』



意味がちょっとわからない……




『島は未だに微動だにしないでしょ?それはわたしがお姉様を抑えているから。でも、それももう限界が近くなっている』



待って、限界ってなんの限界なの?



『身体の限界よ。力に精気を取られ過ぎてしまったの。もう、抑えられそうにないわ……
そして、紫族の皆は全員人柱にされてしまっていたわ。抵抗していたようだけれど、お姉様には敵わなかった……だから、お願い。手遅れになる前に島を破壊して……早く!』



でも、魔物たちが……それに、お母さんはまだ島の中にいるんでしょう?なのに、壊さないといけないの?お母さんごと?



『そう、わたしごと破壊してちょうだい』



でも、そんなことをしたら……お母さんが……




『もう……わたしには居場所がないの。あちらの世界にも、こちらの世界にも。だから死ぬことは本望でもあるわ』



なんで……そんな悲しいことを言うの?わたしのお母さんはひとりしかいないよ?



『わたしはあなたのお母さんではないのよ……だから、早く壊して。わたしの存在はどちらにも必要ないの。魔物たちは後回しにしてもらえると助かるわ。だから、お願い……』




イヤだよ。お母さんが死ぬなんて……そんなこと、できないよ……




『やりなさい。そしてこの世界を救うのよ。ひとりの命よりも、みんなの命の方が大切よ?
あなたの力は……返すから』



あ、待って……まだ納得してないよ……それに、わたしの力って……?



『……瞬間……動と、記…………作……』




待って……行かない……で……よ───