「えー、では気を取り直して本題に戻りましょう」

「……痛い」

「なぜ、カイルさんは生きているんですか?本来なら龍の刻印を持つ者の魂は、あの黄金の門の鍵になるはずです。ケヴィさんが先に生還したので、カイルさんが鍵になりますよね?」

「それは、頭が俺の代わりに鍵となったからだ」

「カノ「頭がですか?龍の刻印なんて持ってませんよね?」

「いや、確かに頭は持っていた。この目で直に見た。背中の右肩辺りにあったぞ。本人は今までずっと隠していたようだ」

「そんなところにか……?だからいつも一人風呂だったのか……」

「なぜこうなるん「と言うことは、頭は死んでもカイルさんを護ったんですね……」

「……「では、もうあの門は開くんですかね?」

「そうなるな。俺が普通サイズの扉を開けたらあの門に繋がっていた。すなわち、こちらからも開けられるということになるはずだ」

「……いい加減に「では、封印のもとへと進みましょう」

「もう、許してあげたらカノン?なんだかかわいそうになってきたよ……」

「絶対に許しません!」




さっきわたしはラセスさんに思いっきり仕返しをしたのだ。

……それは、左頬に紅葉模様を作るという、荒業で……



「……おまえの気持ち、わかった……これは痛い。涙が出るのもわかるな」

「……ああ、だろうな。意識のない俺を現実に引っ張り出した強さだ」

「そこ!こそこそと話さない!」




ケヴィさんとラセスさんがこそこそと話をしていたのでつっこんだ。

よく聞こえなかったけれど、わたしをちらちらと見ていたので絶対に悪口を言っているに違いない。




「カノンが心配するようなことではないが」

「そう「ラセスさんは私語禁止です!」

「……すまん。許してくれ……」

「イヤです!ケヴィさんと同様にデリカシーがないんですから!」

「……俺もなのか?」

「当たり前です!ラセスさんもケヴィさんももっとクールなのかと思ってました!なのに、天然で爆弾発言をするし……」

「「おまえが言うな!」」

「は、はい?!どうしたんですかケヴィさんとカイルさん……」

「……なんでもない。……いい加減へそを曲げるな。仲良くなっているのは良いことだがな」

「……(カノンの方が天然だろ。城で赤ワインを飲んていたときのあの鈍感っぷりは異常だ)」

「…………ああ、もう!これっきりにしてくださいね!あんなことを言うのは!」

「……わかった。約束しよう」

「……(カイルの言うことは聞くんだねカノンは……)」




───さて、本題に戻ろう。




「あの門、本当に開くんですかね?」

「おい、頭の魂を代償にしたんだ。疑うな。さっさと行くぞ」

「そうそう。喧嘩している場合じゃないはずだよ。向こうは今どうなっているか全然わからないんだからね」

「そ、そうでした……」

「……(一方的な喧嘩だけどな)」




ラセスさんが少しむすっとしているようだけれど、アルさんの言うことは最もだ。無駄な時間をここで費やし過ぎた。

向こうの時間が早くないことを祈るしかない。もしくは、時間が止まっていてくれれば……


わたしたちは立ち上がり、黄金の門の前に立った。ピカピカと輝き過ぎて、わたしたちが反射していてまるで鏡のようになっている。

前に立っているカイルさんが門に手を添える。




「行くぞ」




カイルさんは門を押し始めた。音もなく門が開く。

門の向こう側から流れて来る風が、わたしたちの髪や裾を撫でる。

そして、すべて開け放たれたとき、またしても白い光がわたしたちを包み込んだ───