いつだったか彼は、締切前に汗水垂らして 焦る状況が好きだと言った。 コツコツと原稿を書き進める訳でも無く、 溜まったものを必死に片付けるのが自分らしいと胸を張った。 最初は、それを素敵だなんて思った。 寿命を超えているであろう丸い縁の眼鏡も、 執筆中に手が止まると貧乏ゆすりをする癖も、 愛しいだなんて思っていた。