あの涙は後悔の涙なのだろうか。


夫の命を救った事を悔やんでいるのだろうか。


いっそこのまま見殺しにすべきかと。


そうするべきだと囁く自分の心に、身を切るほどに悶え苦しんでいるのだろうか。


それでも・・・


それでも見捨てられない自分自身の愛を呪っているのだろうか。


目の前で死に行く夫の姿を見ながら・・・千年。


千年、そんな苦しみを抱え続けてきたのか。


そして、そこまでしても、そうまでしても・・・


罪は消えない。


犯した罪は消えない。

その事実は未来永劫、消え去ってはくれないんだ。


人は生きていく以上、罪を犯さずにはいられない。


生き続けていくならば、人は同時に罪も犯し続けていく。


生を願うは、罪の根源。

人は皆、全て罪人なんだ。


罪を犯していない人間なんて、この世に存在するものか。


なのに・・・


誰が誰を裁くというのか。


誰がどの罪を責めるというのか。


そんな資格がどこの誰に存在するのか。


それでも・・・・・

それでも、罪は裁かれなければならない。


金欲しさに子どもを攫い、殺す事実が『罪』ならば。


愛する者の命を救うために、他者の命を奪ってしまうも同じ『罪』。


罪は断罪されなければならない。


人の世において責められ、償わなければならないんだ。


いくら償ったところで、決して消えぬと知りながら。


誰にもそんな資格は無いと知りながら。


それでも人は苦しみ続けなければならないんだ。