「3,2,1,アクション!」

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「今回の高体連で、全国大会に出場した
 男子バスケットボール部。
   
 その中でも先鋭と言われる
 野上 誓志選手にお話を伺いました」



夏帆のアナウンス。
いい声だ。




「県の強化選手に選ばれたそうですが」

「努力が認められるのは嬉しいです」

「でも、辞退なさった」

「この学校でやるバスケが好きで。
 それが僕にとってのバスケです」



格好つけちゃって。
いつもは『僕』なんて言わないくせに。



「なるほど。
 自分のバスケの形を追っていると」



夏帆が食らいついた。
インタビュアとしての性だろうか。


【僕にとってのバスケ】


このセリフは鍵になる。




「格好良く言えばそうなんですけどね。
 部活に手を抜くと、軽蔑されますし」

「軽蔑。誰にでしょうか?」



夏帆の目がきらっとした。
誓志の口元がふいに優しく緩む。


「大切な人にです」

















心臓が、どくんと音を立てた。