「ここ?」
連れられて来たのは、昨日の待ち合わせ(予定だった)場所の大門の脇を深く入った、薄暗い路地だった。

「これを見ろよ…」
仁龔が龍の柄が描かれた路地に埋め込まれた陶器の破片を指差す。

「こうやって場所示すの?」

「毎回現れ方は違うけどな」
この辺り一面、陶器の破片がタイルの様に埋め込まれている。

「通称…骨董通り…昔は陶磁器を扱う職人や商人の多い通りだったんだ、今は骨董品を並べる店が多い」

「あっ…この絵付皿の破片見て?綺麗」
色んな物が埋め込まれている通りを砦は座り込んで見入る。

「何か感じるか?」
遊びに来たんじゃない事を思い出して、一応は集中してみる。

「ん~~」
残念ながら何も感じない。
寧ろ、どうすれば何かを感じ取れる…というコツすら知らない。

「やっぱり…」
仁龔は、ため息をつく。

「え?やっぱりって?アタシの事?」

「いや…俺も何も感じないから」

砦は、思い出した様に虎目石をポケットから出し、二人で覗き込んでみる。
「特に…」

「反応は無し…」
虎目石をポケットに戻す砦は聞く。

「ねぇ…聞き込みとかしないの?」

「しない!刑事ドラマじゃないんだし…第一に…龍を見ましたか?って聞くのか?」
確かに…きっと変な顔されて終わるだろう。

「今までは?一人でどんな仕事した?」

「そうだな…探したり…連れ出したり…」

「そうなの?戦って…とか盗んで…とかしてるのかと思った」
少しテンションの上がった砦が身を乗り
出す。

「しない…お前…ゲームし過ぎか?テレビの見過ぎか?」
そんな話をしながら、来た道を戻る二人。

反対から見る通りは印象が違ってみえた。

「あれ…何かな?」
砦は打ち付けられた穴の様な物に気がつ
いた。

「あれは古井戸だ…古い通りだから当時のまま残ってる」

砦は龍の形をした重しを乗せた板の隙間から中を覗く。

「水がある…」

「本当だ…さ…帰るぞ」
何も見つけられなかったが、砦は何度も通りを振り返った。