「仁龔…入るよ…」
まだ、ほんのりと夕焼けの色を映す部屋。
仁龔は耳を澄まさなければ聞こえない様な寝息を立てていた。
枕元にあるスタンドを灯すとベッドに座り耳を心臓に寄せる。
正しいリズムが心地よい。
「ん……」
「あっ…ごめんね…」
「ああ…」
仁龔は胸の上にある砦の頭を撫でる。
「マンゴスチン食べる?好きだよね?」
「貰おうかな…」
「はい…あーん」
スプーンに乗せたマンゴスチンを口の前に差し出す。
「いや、自分で…」
素っ頓狂な顔の砦とは対象的に、照れを通り越した真剣な表情で言う。
「頑なに拒むよね?」
奪う様に取ったスプーンを自分で口に運ぶ姿を見ている。
「で…どうだ?九尾神社の件は」
「うん…気になる書物が見つかったから
神主さんに聞いてみる…って」
「神社の書庫か?」
「凄いよね…平安期位からの本があるんだよ。仁龔は入った事ある?」
砦は、仁龔が寝込んだ数日の事を聞かせる。
「かなり床が高い造りだろ?昔の水害から書物を守る為らしいぞ」
「中腰になれば下に入れそうだよね?」
思い出した様に仁留が笑う。
「あの場所は昔、周の隠れ場だったらしいぞ…周が飼ってた犬…」
「犬?」
「今も大きいのが母屋に居る…その前に拾ったのを書庫の下に隠してたのが見つかってさ…」
クスクスと仁龔が笑う。
周が学校に行っている間に、神主である祖父が仔犬を見つけた。
周だけで無く、無類の動物好きの神主は
迷わず自宅に連れ帰った。
隠れて飼っていた周は、書庫の床下に仔犬が居ない事に慌て、
綺縁屋を手伝い始めたばかりの同級生の仁龔に探すのを手伝わせたのらしい。
「ふふ…周ちゃんらしいね…」
「ああ…変わってない」
仁龔が周を懐かしみ、愛おしむ様な表情をしたのを砦は見逃さなかった。
(なんだろ…この感じ…私が知らない仁龔だ…でも、周ちゃんは知ってる仁龔…)
「どうしたの?遊馬の事分かったよ?」
昨日の仁龔と、その時の感情を思い出し
、書庫前で佇む砦に周が顔を出す。
「あ…うん…」
「昨日、おじいちゃんに出してもらった九尾神社の歴任神主の書物を読んだらさ…載ってたよ…遊馬さん」
遊馬は、京の都より八百年頃に移り住んだ九尾神社の初期の頃の主であった。
水害の多いこの場所を鎮め、この書庫を作った人物なのらしい。
陰陽師としての腕もあったが、式神や物
怪よりも動物を使う事に長けていた。
「周ちゃんの家系って動物好きだね…仁
龔から犬の話聞いたよ」
「ここの床下に隠してたやつ?あれ…付き合ってた頃だ」
「付き合ってたの?」
昨日の得体の知れない苦しくて、痛い感情は(嫉妬)だと気付いた。
「うん…少しだけね…稀縁屋と神社として付き合って行こう…って別れたけど」
クスクスと周が笑う。
「そうなんだ…」
「心配しなくても砦が考えてる様な事にはなってないし、今は仕事上で協力し合う大昔からの古葉と鼎野の仲でしかないよ」
「別に心配は…」
「してたでしょ?」
鶫や仁龔と似たような優しい手で砦の頭
を撫でる。
それにね…と付け加えて周は言う。
「アタシ、結婚してるんだよ。新婚さん」
そう言うと左手を見せると確かに、指輪が光る。
「相手は?」
「その拾った犬の最期をね、お世話をしてくれた獣医。なんか…脱線しちゃったけど…遊馬さんの話だよね?」
幸せそうに照れてみせる周が笑う。
二人は遊馬に関する文献を読む。
「この内容だと、観察を書いてる頃に合うかな?亡くなってるね…」
「うん…」
書庫…
白紙…
家守…
「大分、近づいて来てると思うんだけどなぁ…」
「うん…結び付かないんだよね」
まだ、ほんのりと夕焼けの色を映す部屋。
仁龔は耳を澄まさなければ聞こえない様な寝息を立てていた。
枕元にあるスタンドを灯すとベッドに座り耳を心臓に寄せる。
正しいリズムが心地よい。
「ん……」
「あっ…ごめんね…」
「ああ…」
仁龔は胸の上にある砦の頭を撫でる。
「マンゴスチン食べる?好きだよね?」
「貰おうかな…」
「はい…あーん」
スプーンに乗せたマンゴスチンを口の前に差し出す。
「いや、自分で…」
素っ頓狂な顔の砦とは対象的に、照れを通り越した真剣な表情で言う。
「頑なに拒むよね?」
奪う様に取ったスプーンを自分で口に運ぶ姿を見ている。
「で…どうだ?九尾神社の件は」
「うん…気になる書物が見つかったから
神主さんに聞いてみる…って」
「神社の書庫か?」
「凄いよね…平安期位からの本があるんだよ。仁龔は入った事ある?」
砦は、仁龔が寝込んだ数日の事を聞かせる。
「かなり床が高い造りだろ?昔の水害から書物を守る為らしいぞ」
「中腰になれば下に入れそうだよね?」
思い出した様に仁留が笑う。
「あの場所は昔、周の隠れ場だったらしいぞ…周が飼ってた犬…」
「犬?」
「今も大きいのが母屋に居る…その前に拾ったのを書庫の下に隠してたのが見つかってさ…」
クスクスと仁龔が笑う。
周が学校に行っている間に、神主である祖父が仔犬を見つけた。
周だけで無く、無類の動物好きの神主は
迷わず自宅に連れ帰った。
隠れて飼っていた周は、書庫の床下に仔犬が居ない事に慌て、
綺縁屋を手伝い始めたばかりの同級生の仁龔に探すのを手伝わせたのらしい。
「ふふ…周ちゃんらしいね…」
「ああ…変わってない」
仁龔が周を懐かしみ、愛おしむ様な表情をしたのを砦は見逃さなかった。
(なんだろ…この感じ…私が知らない仁龔だ…でも、周ちゃんは知ってる仁龔…)
「どうしたの?遊馬の事分かったよ?」
昨日の仁龔と、その時の感情を思い出し
、書庫前で佇む砦に周が顔を出す。
「あ…うん…」
「昨日、おじいちゃんに出してもらった九尾神社の歴任神主の書物を読んだらさ…載ってたよ…遊馬さん」
遊馬は、京の都より八百年頃に移り住んだ九尾神社の初期の頃の主であった。
水害の多いこの場所を鎮め、この書庫を作った人物なのらしい。
陰陽師としての腕もあったが、式神や物
怪よりも動物を使う事に長けていた。
「周ちゃんの家系って動物好きだね…仁
龔から犬の話聞いたよ」
「ここの床下に隠してたやつ?あれ…付き合ってた頃だ」
「付き合ってたの?」
昨日の得体の知れない苦しくて、痛い感情は(嫉妬)だと気付いた。
「うん…少しだけね…稀縁屋と神社として付き合って行こう…って別れたけど」
クスクスと周が笑う。
「そうなんだ…」
「心配しなくても砦が考えてる様な事にはなってないし、今は仕事上で協力し合う大昔からの古葉と鼎野の仲でしかないよ」
「別に心配は…」
「してたでしょ?」
鶫や仁龔と似たような優しい手で砦の頭
を撫でる。
それにね…と付け加えて周は言う。
「アタシ、結婚してるんだよ。新婚さん」
そう言うと左手を見せると確かに、指輪が光る。
「相手は?」
「その拾った犬の最期をね、お世話をしてくれた獣医。なんか…脱線しちゃったけど…遊馬さんの話だよね?」
幸せそうに照れてみせる周が笑う。
二人は遊馬に関する文献を読む。
「この内容だと、観察を書いてる頃に合うかな?亡くなってるね…」
「うん…」
書庫…
白紙…
家守…
「大分、近づいて来てると思うんだけどなぁ…」
「うん…結び付かないんだよね」


