いつからだろうか、琴美は自分のおった傷の分だけ人には優しくする。
そう思っていた。

苦しそうにする人とは話が合う。
頑張れという言葉が苦しいのは誰よりも理解していた。
これ以上何をがんばればいいの?
もう生きているだけでがんばっている。

そして、いつも決まって憂鬱になるときは、自分にないものを持っている人を見るたびに、時分を否定してしまう。見比べてしまう。そのたび余計に自分を責めて更に自信がなくなる。惨めになる。
どうしてだろうか。
普通に育った人は傷ついたことすら気がつきもしない。
逆に傷つけられるばかり。
そしていつも楽しそうにしている。

琴美はいつも自信をなさそうに振る舞う。
それを、見た他人は決まってこういう。

「もっと自信もちなよ。」

そんな言葉を言われる度に、できるなら最初からやってる。そんな風に思っていた。
そして、いつからだろうか、自分と他人の境界線があいまいになっていた。