〈刃side〉

「……」


マジ、かよ。


溝口美空と名乗った女は至近距離で手を握りしめながら話している。


「私の家は宝石店なんです!」


知ってる。


まさかとは思っていたがその通りだったな。


けど、返したら調子に乗って続きそうだ。


「……」


だから、黙っている。


「それに、この頃ですが世にも珍しい宝石を観賞用として置いているんですわよ」


「…………」


それも知ってる。


しかし、よくしゃべるな。


つか、手離せ。


「……」


「そうですわっ! ……今から私のお家にいらっしゃいませんか?」


今から……!?


「……無理だ」


「そうですかー……」


シュンとうなだれている。


何せ、満月の夜にいただきに行くからな。


ふと、視界の中にななと留宇の姿が見えた。


「……」


なんか具合悪そうだ。


ななはうつむいていて自身の胸をおさえている。


留宇は俺に不安げな表情を浮かべていた。