「溝口さんって[溝口ジュエリー]のご令嬢っ!?」


「はい。 知ってるんですか?」


「まぁ、私の高校でもよく聞くから」


「あー……」


納得できるようなできないような、そんな気分だ。


溝口嬢と刃を見た。


溝口嬢は何かを話していて、手も握ったままだ。


刃は眉を寄せていて、黙っている。


あきらかに嫌そうだ。


「……ナニよー、近すぎだって」


独り言を呟いたつもりだったが、隣にいる留宇さんには聞こえていた。


「ななちゃん、どうしたの?」


「えっ、あ、いや……何でもないです」


……なんだろう、これ?


モヤモヤする。


「……」


そっと、胸を押さえる。


「ななちゃん……」


留宇さんが心配そうに見ていた。