〈富澤真琴side〉

今、俺は研究室の通路を通っている。


目的は見回りで、怪盗ソウドが潜んでいるのではないかと思ったからだ。


それよりも、


「……また、女扱いされた」


先程の事を思い出し、溜め息をついた。


橘殿から鍵を受け取った時、それと同時にメモを渡された。


《もし、君が"女の子"だったら僕の部屋に誘っていたのになぁ》


……悪かったな"男"で!


そのメモはすぐ小さく丸めて捨てた。


……俺の家は代々続いている日本舞踊で、その家で生まれた俺は小さい頃から中学卒業まで女装していた。


それまでは親から礼儀作法など教え込まれ、それまでは"おしとやかな女"だった。


そんな俺が警察官になりたいと思ったのは中二の時、誘拐されたのだ。


犯人は四人の男で身代金を貰うだけでは足りなかったのか俺に手を出そうとした。


もうだめだっと思った瞬間、警察が来て助かったのだ。


「これで君は無事に帰れるよ」


その言葉を聞いて安心したのかその場で泣き出してしまった。


「よく泣かずに我慢できた」


そう言って、頭を撫でてくれた。


今でもあの事は覚えている。


その後は親元を離れ警察になるために頑張って勉強し、去年に念願の警察官になった。