「……俺、怪盗になるから」
テーブルに向かい合わせに座り、俺はすぐに言った。
なるべく母さんに目を合わせないように。
「ふーん。 いいんじゃない」
……。
あまりにも意外すぎる言葉に耳を疑った。
「意味、わかって……」
「わかっているわ。 逆に私が反対すると思ってたの?」
コクっと頷いた。
「もしそうだとしても意見を主張し続けるんでしょう?」
答えは勿論、
「そう、だ」
「……だから、よ。 それに丁度いいかなって」
フウッと息を吐き、
「転勤決まったの。 カイルの故郷"イギリス"に」
「……父さんの?」
俺が聞くと母さんは頷いた。
「本当は中学の息子を一人にさせたくないけど、刃がここで目的を果たしたいんだったら私だけが行くわ」
「……いつ?」
「刃が三年に進級する日」
そう言うと、俺に頭を下げ、
「ごめんね。 生活費のお金は私が払うから。 それと、何かの行事がある時は絶対私を呼んで」
「……わかった」
そこで頭を上げる。


