満月と怪盗と宝石と


「いやいや、本当だって。 タッグの相手は僕の妻だしね」


「「…………」」


まさかの、カミングアウト……


奏さんが嘘をつかない性格なのは分かっているんだが……


だが、聞いていくうちにまさかと思ってしまった。


いや、確実に……


「遠回しに俺が怪盗をやれって事ですか」


「うん」


奏さんは頷いた。


「刃クンは身体能力は人一倍優れているし、おまけに頭脳明晰だから向いていると思う」


「……」


すぐに頷く事ができなかった。


当たり前かもしれない。


――ガタッ


「奏さん、本気で言っているんですか?」


「留宇?」


不安げな表情を浮かべている。


「仮に刃がやって怪我でもしたらどうするんですか!」


「留……」


「それに、警察に追われる日々となるんですよ! そんなの耐えられるワケじゃないですか!!」


留宇が声を荒げるなんて。


留宇を見ていた視線を俺に向け、


「刃クンはどうしたい?」


今までにない真剣な表情だった。