満月と怪盗と宝石と


「……ぎっ!」


「遅せぇんだよ」


手を押さえようとした男の頭をつかみ地面に叩きつけた。


「……うっ」


――ジャキッ


落とした拳銃を拾い、逆に突きつけた。


ひっ、と男の喉がなる。


「本物、か」


「……オ、オレが悪かった。 か、返すからっ……!」


震える手でダイヤを突き出す。


それを受け取ったが、拳銃を下げるつもりはまだ無い。


「質問。 残りのダイヤはどうした。 それとなぜ、家から盗ったんだ。 答えろ」


「……」


なかなか口を開こうとしないから、引き金に手をかけて……


「わ、分かった、答える! "一目惚れ"したんだ……」


「はぁ?」


「お前と同じ黒髪に青い目の……」


まさか、母さん?


「……まさかそんなくだらない理由で、か」


「違う! たまたま通った時に見たから、好奇心で……」


「……」


さらにくだらない!


それで父さんの形見を盗られたのか!!


男の眉間に放ちたくなる衝動を必死に抑える。


「……もう、いいか?」


「駄目だ。 もう一つの質問がある」


「あー、その他のは無い」


「……………………は?」


次の男の言葉は俺に最大の衝撃を与えた。