満月と怪盗と宝石と


――ガサガサッ


「……この辺あたりだな」


草や木を掻き分けながら呟いた。


正直、家の方が歩きやすい。


枝に引っかかったせいなのか、あちこちが破れて、小さな切り傷ができていた。


溜め息をついた。


「……ひひひっ、今回もチョロかったな~♪」


……いた。


数メートル先に人影が。


赤だから目立っている。


「さーて、次は何を盗もっかな~」


そう言いながら、盗んだばっかりのティアラを片手でくるくると回している。


そしてもう片方の手でポケットからあるものを取り出した。


それは赤のダイヤだった。


そして、男の言葉で俺は動いた。


「不思議だなぁ~…前に一回見た時は色が"変わった"ハズなんだか……」


――ガサッ


「当たり前だ。 それは満月の夜にしか反応しないんだからな」

「誰だっ!?」


男は驚いたようで目を見開いたまま俺を見た。


「貴様は確かっ……」


「ほぅ、俺の事覚えてんだ。 なら話は早い…それ、返せ」


「はっ、嫌だと言ったら……?」


ティアラをその場に置き取り出したのは拳銃。


そんなんで俺が怯むと思ってんだか……


――ドッ


俺は一気に詰め寄り、拳銃を持つ手を蹴り上げた。


ここで小学生の時に習った合気道が役に立った。