満月と怪盗と宝石と


「大丈夫よ、刃が気にする事はないわ」


次の日、俺の話を聞いた母さんはそう言った。


当然納得する事ができなかったから言い返そうと口を開いたが、


「大丈夫、大丈夫だから……」


抱きしめられ言い返す事ができなかった。


……んなワケねぇだろ。


肩が震えているクセになんで責めないんだよ。


「……っ」


昨日の三日月が嘲笑っているように見えた。


あの男の顔と重なって見えたんだ……


グッと拳を握りしめた。


:続いてのニュースです。 神出鬼没の怪盗から予告状が届きました。


「!!」


テレビのアナウンサーの声を聞いた瞬間、俺は母さんを引き剥がしテレビの前に向かった。


「刃、どうしたの?」


母さんの声を無視してテレビを食い入るように見ていた。


……アイツだ。


顔は分からないが、赤一色の格好を見れば一目瞭然だ。


:予告状の内容は《今夜零時、英美術館のサファイアのティアラを手に入れるぜ。 首を長くして待っていろよ MH》だそうです。


:この上から目線の所もこの怪盗の特徴……


――ブッ


感想なんでどうでもいい。


「……母さん、行ってきます」


「……いってらっしゃい」


リモコンをテーブルに置き、家を出た。