満月と怪盗と宝石と

〈留宇side〉

「……あんな刃が怒るとこ初めて見ました」


向かい側の席に座っているアキラ君が呟いた。


「刃も悩む事はあるのよ」


そう言って私はバックからあるものを取り出して口に放り込む。


パキッと音がして甘い味が口の中に広がる。


チョコレート。


刃の口の中に入れたのもこれだ。


「アキラ君も食べる?」


「! いただきます」


アキラ君は頭を下げて受け取った。


なんで敬語なのかな?


疑問に思っていながらも話は続ける。


「刃ね"悩みがあると前髪をいじるクセ"があるのよ」


「へぇー…知らなかったですね」


「それは人前ではやらないからよ」


「でも留宇さんの前ではやってましたよね?」


当たり前じゃない。

「私は刃の幼なじみよ。 それに家族同様と思っているわ」


だから、本音とかも思い切り打ち明ける事もできる。


「留宇さん、今の言葉、深いですね」


「そう?」


うふふと小さく笑った。