満月と怪盗と宝石と


「留宇さん、可愛いなぁ」


アキラは独り言のように呟いた。


「……刃クン」


「何ですか?」


声をかけられ奏さんを見ると、なぜか目をキラキラさせながら、


「その、恋のお相手は誰?」


と聞いてきた。


……。


「あの、いつの間に俺が恋してるって事になってんですか」


「え、ち、違うの?」


「違いますよ」


「えー…」


と奏さんは残念そうに呟き、カウンターへ行ってしまった。


「……」


だいたい相手が誰だがわからねぇのに……


相手が……





「うおっ!?」


アキラの驚いた声に我に返る。


「どうしたの? 急に立ち上がって……」


「あ、いや何でもねぇ……」


俺は平静を装って座った。


だが内心平静ではいられなかった。


なぜだ?


ななの顔が浮かんだ?