満月と怪盗と宝石と


「刃…熱でもあるんじゃねぇか?」


隣に座っているアキラが俺の顔を凝視している。


「別に無いけど」


「じゃあ何で顔が赤いんだよ」


「え、そうかしら?」


留宇もまじまじと見てくる。


「……」


何なんだコレは。


何かを言おうとしたが、


「わかった!」


アキラが突然叫び立ち上がった。


「……」


「な、何が…分かったの?」


留宇が少々たじろぎながらアキラに聞いた。


「結論から言う」


アキラが俺を指差し、


「刃は今、"恋"をしているんだ!!」


――ガシャーンッ


「「「!?」」」


音をした方を一斉に見ると、


「ごご、ごめん! すぐに持ってくるから!」


奏さんがトレイと縦に持ったままカウンターへ戻って行った。


床には割れた皿とティーカップと落とした衝撃で無惨な形になってしまったケーキ。


そして黒い液体がだんだんと床に広がっていく。


……。


多分、運んでいる途中で話を聞いて落としてしまったんだろう。