満月と怪盗と宝石と


「'実は、私もここに住んでいるんです。 良かったら一緒に行きましょう'」


「'いいのかい?'」


彼は驚いていた。


「'だ…だったらあたしも……'」


――ピリリリッ


「'……失礼'」


梨緒は彼と私に背を向け電話にでる。


あの様子から相手は梨緒のお母さんだろう。


「うんうん」と相づちをうったり、「何でっ!?」と驚いたりしていた。


数分後、


「……分かった。 じゃあ……」


――ピッ


電話を切り、深い溜め息をついた。


「お母さんに事情を話したら早く帰ってこいって、それなのに買い物頼まれた……」


「そうなんだ……」


すぐにパッと顔を上げ、


「という事で、あたしは先に帰るね」


ニッと笑いビシッと手を上げ梨緒は走って行った。


「'……行きましょう'」


「'お願いします'」


梨緒が見えなくなった後私は彼とマンションへ向かった。