満月と怪盗と宝石と


「'実は…道に迷ってしまいまして……'」


彼は困ったように頬をかく。


「ひゃー、その仕草も絵になるー」


「梨緒、ここは喜ぶ場ではないよ」


「えへー」


笑いながら梨緒は頭をペチッと叩いた。


「'えーっと、わかる範囲なら案内できますよ'」


私がそう答えると、彼の表情がパアッと明るくなり、


「'本当ですか!? では、この場所は分かりますか?'」


そう言って、ジーンズのポケットから"紙"を取り出した。


私はそれを受け取り、梨緒は横から覗き込み、


「……」


「……」


ポカーンとしてしまった。


「'どう…ですか?'」


彼の声に私と梨緒はハッとした。


「だって、ねぇ」


「……そうね」


彼から受け取った紙が示す場所はあるマンション。


そこは私が住んでいる所であり、


隣の部屋を示していたのだ。