「俺は"星空"って名字が好きだ」


「えっ?」


刃の言葉に驚いた声をあげる美恵子さん。


「"星"は数光年先から瞬き真っ暗闇を照し示し、"空"は生命の還る場所でそれは地上の人々を見守る……」


はぁと息を吐き、


「"星空"って意味はそういう事だと思う。 母さんが"星空"を好きになれないと言っても俺はそれを誇りに思うから。 これからも……」


――ガチャ


玄関を開ける音が聞こえた。


「……」


「……」


……沈黙。


しばらく経って、


「……ふふっ」


美恵子さんの笑い声。


ではなく、


「まったく刃ったら……」


美恵子さんは泣いていた。


美恵子さんの目からポロポロと涙がこぼれ落ちる。


「あのっ! こ、これで拭いて下さいっ!」


あたしは美恵子さんにティッシュ箱を差し出す。


他に言う事はないのかと思われるがあたしにはこれが精一杯だった。


「ななちゃん…ありがと……」


美恵子さんの泣き声が部屋の中に響く。