「あら…ちょっと湿っぽくなったわね」


パッと頭を上げ慌てて口を押さえる。


「……あ」


「お茶飲む? 私もってくるね」


美恵子さんは立ち上がり部屋を出て、


「……どうしたの?」


廊下にいる人物に声をかけた。


この場合、一人しかいない。


「……いや、出かけようと思ったが無断では悪いと……」


廊下にいる人物、刃は壁にもたれかかっていた。


「そうなの? 気をつけてね」


「……」


刃は何も言わずに通り過ぎたが、


「! なな」


引き戻り、ドアから身を乗り出す。


「話がある。 次の満月に会ってくれるか?」


「え?」


「それだけだ。 何故だかは聞くな」


刃はその場から立ち去る。


「えー?」


つまり、刃は怪盗ソウドになってあたしに会うと?


しかも、満月って明後日じゃん!


あたしが頭を抱えていると、


「それと母さん」


刃がまた部屋の前に戻った。


なんか刃の行動、忙しいなー……