微かに聞こえたノックの音で、ジュンクは我に返った。約束の時間かと壁時計を見ると、既に約束の時間を5分過ぎていた。


「ごめん、入っていいよ」


机の上を片付けベットを整える。するとタイミング良く扉が開き、見慣れた、約束の相手ではない少女が入ってきた。


「クーォ……」


クォーツはジュンクの呼び掛けを無視してベットへと向かった。ジュンクは暫くクォーツを見ていたが、やがて気を取り直すと、ベットに座るクォーツの側へと行った。


「ゼファなら来ないよ。私が、今夜の相手だ」


半ば挑発するような声は、一種の焦燥も混ざっていた。ジュンクは隣に座ると緊張に震えるクォーツに口付けをした。


「クーォとするのは久しぶりだね」


耳元で囁き耳朶を甘噛みする。嬌声をあげ身を竦ませるクォーツを宥め、そのまま押し倒す。


「・・・怖いなら、言って」


小刻みに震える体を抱き、唇を吸う。クォーツは緩く抗い舌の侵入を許した。


「……ジュン、ク・・・っ」


苦し気に息継ぎをし自ら口腔に舌を差し入れる。それは拙い上にたどたどしい口付けで、それでいてジュンクを魅了した。


「……はっ・・・、クーォ・・・上手になったね」


頭を撫で、頬に口付ける。クォーツは擽ったそうに目を細めるとジュンクに抱き着いた。


「……焦ったんだよね、ゼファが何処かに行っちゃう気がして」


抱き着いたまま、訥々と話すクォーツをジュンクはただ撫でていた。ジュンクは撫でながら、クォーツに何事かを囁く。


「……」


「うん、・・・私が馬鹿だった。私達は3人でひとり、誰かが誰かのものになるなんて、有り得ないんだ」


クォーツは安心したように呟くと、疲れたように眠りについた。


ジュンクはクォーツをベットに寝かせ、上着を羽織り外へと向かった。