「ゼファ」


クォーツの声に振り返ったゼファはいきなりのタックルを躱すことが出来なかった。


「クォ・・・」


「何処行ってたの」


腰元に抱き着き、泣きそうな声で言うクォーツを撫でる。クォーツは幼子のように縋るとゼファの首筋を舐めた。


「・・・ゼ、ファ・・・」


唇を吸われ、されるがままになるゼファ。すると、不意にクォーツが離れ悲しそうな顔でゼファを見詰めた。


「やっぱり、私じゃだめなの……」


傷付いたように言われ、胸が痛くなる。クォーツは真っ直ぐにゼファを見詰めやがて諦めたように呟いた。


「……やっぱりゼファは、ジュンクの方がいいんだよね。そりゃあそうだよ、だって、ゼファとジュンクの《フィット》はいつも失敗することがないのに、私とゼファが《フィット》するとゼファ、いつも疲れた顔してるもん」


クォーツは唇を噛み締め泣くまいとして、ゼファを見詰める。その真っ直ぐな瞳にゼファは動けなくなった。


「……今夜も、ジュンクのところに行くんだよね」


消え入りそうな声で言われ、首を横に振ることが出来ない。例え嘘でも首を横に振ることが出来ないのは、クォーツの瞳が真剣なものだったからだ。


クォーツはその沈黙を肯定と取り、自嘲気味に微笑んで踵を返した。


「クォ」


クォーツの靴音が響く中、ひとり残されたゼファは後悔に苛まれた。