新年が明けて、あわただしさが少し落ち着いてくる頃

寒さも和らぎ、春の足音が遠くに聞こえるような気がするそんな2月

立花しるふにとって最大と言える敵がやってくる

そう、日時は2月14日

世の女たちが腕をふるって手作りチョコをプレゼントする日だ

この日ほどしるふが憂鬱で気を使わない日はない

それもこれもあの甘いものの存在意義すら理解していない

ついでいにいうと自己評価のものすごく低い

けれど無意識に女を陥れる天才、黒崎海斗その人のせいだ



「あー」

「ちょっとー、その不機嫌丸出しでため息つくのやめてくれない?」

むすっとした表情で頬杖を突き、盛大にため息をつくしるふに

ナースステーションの中から飯田莉彩が眉を寄せる

「だってー、明日バレンタインじゃない」

「そうだけど、それがどうしたって言うのよ。あ、明日、期待してるから」

しるふの作るお菓子、おいしいんだよねー

と、去年しるふが医局に配ったマフィンの味を思い出し、莉彩は一人微笑む